もう終わりにしよう(1)

大学4年以降長い間僕は、迷走状態にあった。

恋愛の挫折から精神的に虚ろになり、就職活動もうまくいかず、大学にも行かず、2年留年。
そんな自分に優しくしてくれた女性にも愛想をつかされ、別れを告げられた。無為に過ごしてきた取り戻せない時間と、やりたいことをあきらめたという自分に対する失望を思うと、足がすくんで動けなくなった。

卒業して2年間、いわゆる「IT土方」として暮らした。長い学生生活の引き換えに得たものは、結局少ない給料と長い労働時間、25歳でやっと就職したという引け目だけだった。月100時間を越えるサービス残業、終電で帰宅の毎日。

高校から7年間続けていた合唱は、声が出なくなりやめてしまった。休日には友人に会うことを続けていたが、途絶えた。「死にたい」というのが口癖になり、鬱を抑える薬を飲んでいた時期もあった。

いつも同じスーツと靴で会社に行っていた。
あるときクリーニング屋にスーツを出しに行ったところ、店員に「あの、、これでもクリーニングしますか?」といわれた。目の前には、股の部分が完全に擦り切れたズボンが広げられていた。恥ずかしくて、そのまま畳んで店を出た。そんなことも気づかないくらい、生きることにどうでもよくなっていたのだ。

今にして思えば、何という自己憐憫

2年の終わりに、アパートの隣の住人が変わり、深夜に騒ぐようになった。寝不足に陥り、ついに体を壊し、仕事は休みがちになった。このままでは自分の人生はいつまでも好転しないとようやく悟った。
2007年の春は景気が好転し、求人が多く出ており、現在の会社に転職することができたのは非常に幸運なことだったと思う。給料がかなりアップする(というか、元が低すぎたのだが)のもありがたかったが、履歴書を見て、面接に呼んでくれて、採用してくれる人がいるということがなおのこと嬉しかった。すぐに引越しをして、物質的には人間的な生活を回復した。